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2013年5月

2013年5月23日 (木)

【【【『魂医(ソウル・ドクター)―和合医療―』vol.5】】】


魂医(ソウル・ドクター)Vol.5
―和合医療―
第一章

新宿駅の山の手線のプラットホームで顕微鏡の入った袋を
嬉しそうに抱えた雨情は、
しずえの顔が家を出る前と打って変わって
真っ青になっていることに気が付いた。

「ママ、どうしたの。
顕微鏡が高かったんで気分悪くなったの?」

「なにいってるのよ、ママしっかり働いてお金貯めたから大丈夫。
ちょっと頭が痛くて、気分悪くなっただけ、
おトイレに行ってくるからベンチに座って待っててね。
荷物をみててよ」

「うんわかった」。

階段を上り姿が見えなくなったが、
一分もしないうちに母親は階段から降りてきた。

「ママ、もうトイレいってきたの?」

しかし別人のように顔色の戻ったしずえは、雨情になんの返事もしない。

勢いよく雨情の前で一旦止まり雨情を見つめるが、
完全に無表情で再び来た道と逆を向くと、
プラットホームを凄い勢いで歩きはじめた。

そして反対側にある出口から姿が消えていった。

雨情は慌ててしずえを追いかけようとするが、
顕微鏡が気になり元に戻った。

「それにしてもあんな無表情なママははじめてみたな」
と一人言を呟いたところで突然、雨情は肩を叩かれた。

そこには母親が再び青い顔をして、
しかし先ほどと違って笑顔で立っていた。

雨情は、飛び上がるほど驚いた

「ママ!驚かせようとして、僕の前を通りすぎたり、
走って回り込んできたり、なにをふざけてるんだよ!」

雨情は怒って母親に大きな声で叫んだ。
母顔は無理やりつくった笑顔から苦しそうな顔に変わりつぶやいた。

「なにを寝言のようなこと言ってるの。
ママは頭が割れそうに痛くて気持ち悪くなって
トイレで吐いて、今ゆっくり降りてきたところよ。
雨情こそ、そんな冗談は辛い時に言わないでね」

「ママ今日は、僕の誕生日だからジョークも
迫真の演技でしてくれてるんだね。
もうびっくりして心臓とまっちゃうよ」

しずえは無視して、目の前にちょうど来た電車に雨情の手を引いて乗り込む。
雨情は、しずえの手を握った途端、あまりにも冷たい手に驚くが、
手をつないでいる喜びで、暑さも手伝い無邪気に心地よく感じた。

つづく、、、

■バックナンバー
Vol.1: http://wagoiryou.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/vol1-76c0.html 
Vol.2: http://wagoiryou.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/vol2-2841.html 
Vol.3: http://wagoiryou.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/vol2-d955.html
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